1. home
  2. マガジン
  3. 野球の日特集「野球の日に野球を語る。」

マガジン

もしドラ著者 岩崎夏海インタビュー

  • 編集長

    「野球は監督だ」とも言われますけれども、監督の力というのは相当なウェートを占めていると思われますか?

    岩崎氏

    監督がほとんど全てといっても過言ではないですね。
    試合の運び方、戦略、戦術という部分ではなく、それに至るまでの、関係の築き方だとか、人間性の育み方とかって事が大事なんじゃないかなあと思いますね。 ただ、昨日試合後にインタビュー通路に行かせてもらって選手の顔を真近でみさせて頂きましたけども、17歳、18歳の肌のピチピチしながらも、眉毛なんか剃っちゃって、体も大きく生意気そうな一方で、まだまだ子供な部分もあり、心はまだまだ未熟なんですよね。 外野からもっとこう教育すればいいじゃないかと気軽に思っているのですが、この子供たちを、叩き直すというのは並大抵のことじゃないなって思いましたね。やっぱ難しい事なんだろうなあ、と実感しました。

    編集長

    高校野球の監督をやりたいですか?

    岩崎氏

    高校野球の監督はあまりやりたいと思はないですね。むしろ高校野球の監督を教育したいですね。つまり、先生の先生になりたいですね。 それだったら物凄く得意。
    高校生とは何か、という部分に関しては、僕の方が良くわかっていると思いますので。
    色々教えて差し上げる事は出来るかと思うんですけどね。 監督コンサルというか高校野球監督コンサルティング。
    「子供って言うのはこう考えるんだよ」とか、「こういうふうに動く人間なんだよ」とか。
    また選手の精神的な指導というか。そういう状況に追い詰められたらどういう気持ちを持てばいいのかとか、あるいは監督は何の役割があるのかなど。

    昨日の北大津の試合でもう一個あったんですよ、ターニングポイントが。

    8回の表にヒットを与えて、その次に連続ヒットを打たれて、ノーアウト一塁二塁になったんですよ。
    ノーアウト一塁二塁になった時点でキャッチャーがタイムを取ったのですが、結局そこで伝令がでたんですよ。
    ルール上、監督の伝令で使えるタイムは3回。そのために監督がちょっと躊躇があって出したんですよね。
    僕、あれが絶対によくなかったなあと思って。と、言うのは、あの場面でピッチャーというのは自分でわかっているんですよ。
    三振を取ろうと欲をだして出した結果がノーアウト一塁二塁。「言われなくてもわかっている」状況で言われると頭の良い子は逆にカチンとくるんですよ。それが逆に、彼の体を固くするんです。

    セオリーを考えると、伝令を出し落ち着かせる、みたいな。でもセオリー通りじゃない方が良い事がある事を監督は知った方がいいと思う。
    案の定、その後に4点を取られたので、あのタイムが良くなかったんだなと。結果論かもしれませんが。
    僕はタイムをとった瞬間にその編集者の方に「絶対にタイムは悪い方向に作用しますよ」と言ったらその後、本当に4点取られたのでまたビックりされてましたが。細かい事を言うと、その2点取られた時点で「あっ、この時点で出さなきゃダメなんですよ」と。その時点では出してないんですよ。
    さっき一回使ってしまったからもう一回出すのはもったいない。それはわかってないというか、そういうのを教えられたら上手く行くのになって思いましたね。

  • 編集長

    岩崎さんから見てこの監督は凄いなという監督はいますか?

    岩崎氏

    木内監督ですね。 こんな事がありました。当時、84年選手権大会決勝 取手二高 対 PL学園で、9回に同点にされた時点で、ピッチャーの石田君の目が完全に死んでいたんです。これヤバいなって。ところがですね、一回ライトに下げてもう一回マウンドに戻ってきた時には別人のように生き返っていた。
    闘士の塊になっていたんです。
    一回ライトに下がった石田君は、ワンポイントの交代だってわかってなかったんですよ。だから、もう代えられたと思ったんですね。だからふてくされてる訳じゃないですけど、なんかこう、しぼんでたんですよ。その後、柏葉君という投手がワンポイントで行った後、もう一回、石田君がもう一回マウンドに立てと言われた時に、「俺?」って自分でベンチに向かってリアクションするわけですよ。「もう一回投げていいんだって」という表情で。気持ちが生き返らせたというか、まさかそれを想像していなかったというか。

    木内さんはそこまで読んでた可能性はありますよね。

    岩崎氏

    それが凄いというか。
    高校の監督は特にそうなんですけど、殆どの監督は、ちょっと頭でっかちになってるような所があるのかなと思いますね。
    子供達と付き合っていると多分、子供たちの嫌な場面とか未熟な場面ばっかりが目についたり鼻についたりして。
    彼らのいい所を伸ばすとか、見つけるというのには中々なりにくいのかなって。未熟なだけにですね。でも、もうちょっと広い世界を見ると、子供達ほど未熟じゃないにしても、大人も多かれ少なかれ、欠点を持っているということ。
    そういう中で、一流企業はいい部分に注目して、それを生かし合う組織を作っていく。そういう事を体験すると、子供たちの弱い所を矯正するばかりが組織の作り方じゃないなあ、と思いますね。もっと良い組織作りが出来るのではないかな、という、こんな意識が僕の中にあるんですよ。

  • 編集長

    プロ野球ってどう思われますか。

    岩崎氏

    プロ野球はもう完全に終わってますね。僕は10年ぐらい前から見てないですね。
    面白くないんですよ。本当に幾つぐらいから面白くなくなったのかな…。
    野村監督がヤクルトにいた時はまだキリギリみていたぐらいですかねぇ。多分97~98年頃ですかね。
    野村監督と西武の日本シリーズの時は見る価値があったかなあというのは覚えていますが、97年ですかね。
    でもやっぱり、日本シリーズが価値を決めるんですよ、結局は。だから日本シリーズが面白くないっていうのは結構致命的ですねぇ。

    価値というのは?ゲームそのものの価値ですか、それともエンターテインメントとしての価値ですか?

    岩崎氏

    エンターテインメントです。エンターテインメントとしてお金を払う価値が無いという事です。興行として失敗している。
    プロ野球は人に「面白い」って思ってもらわなければ、やってる意味がないんですよ。
    やはり、勝利至上主義というか、球団の思惑、親会社の思惑とかが前面に立ち過ぎたのが面白くなくなった原因というか。
    クライマックスシリーズとかも興ざめ極みというかですね。 なんか全てが失敗しているって感じですね。

    編集長

    ここ10年で何が変わってしまったと思われますか?

    岩崎氏

    V9の時代というドキュメントをやっていた時に、映像を見たのですが、「これだったら見に行きたいな」と思ったんですよ。
    巨人と阪急か西宮球場で。季節は秋、空が抜けて見えるのですが、何と言うんですかね、秋の空をしているんですよ。
    「日本シリーズってこうだよなあ」と。これじゃなきゃダメなんですよ。
    西武ドームもそうなのですが、東京ドームなんてあり得ない。
    秋のちょっと風が吹く中で選手がウィンドブレーカーを着て、ちょっと脱いで寒々とやるみたいな。季節感がない。
    ああいう感じが何故出せないのかなあ、と。
    絵が素敵だったんですよ。1970年代の。
    絵的にもう、それだけで興味、惹かれるものがあったんですよね。そういうモノが全く失われましたね。
    後楽園にもありましたし、西宮球場にもありました。
    東京ドームを取りあえず壊す事ですね。もう一回後楽園球場にする事ですよ。天然芝の。野球する場所じゃないですホントに。
    昔、子供の時は後楽園球場に何回か行きましたけども、凄く無茶な球場で、傾斜もきつくてなんですけど、何かこう、非常にドキドキさせられる物があったり、向こうにパラシュートみたいなものが見えたりですね。
    夏だったんですけれども、まだ日があるうちから試合が始まりやがて夜になるんですね、ナイターのカクテルが光って、王と長嶋のレプリカのサインボールが売っていて、どうしてもこう欲しくなったりですね。そういうのがもう…。

  • 編集長

    プロ野球はどうすべきですかね。

    岩崎氏

    原(現巨人監督)さんが僕の所に話を聞きに来たらいいと思いますよ(笑) とにかくねWBCで中島(西武)にバントをさせる時点でもうダメです。誰も幸せにならないですよ、そんなんじゃ。

    編集長

    さて、最後に日本の草野球人にひとことアドバイスを与えるとしたら。

    岩崎氏

    草野球でも、練習して欲しいんですよ。
    試合ばっかりしているようなチームもあるじゃないですか。それだと続かないですよね。
    練習をする期間を設けてほしいですね。練習があって試合があり、試合があって練習がある。
    この二つが合わさって初めて野球なんですよ。試合だけだと野球の本当の楽しいところが味わえないと思うんです。
    キャッチボールの楽しさと言うものを、真剣にやるキャッチボールみたいな奥深さみたいな物を味わえないんじゃないかと思うんです…。

  • 岩崎 夏海(いわさき・なつみ)氏

    『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』出版を機に、現在は所属作家として活動中。

    1991年、作詞家である秋元康氏に師事。
    以降、数多くのテレビ番組の制作に放送作家として携わる。
    『とんねるずのみなさんのおかげです』『殿様のフェロモン』『ゲッパチ!UN アワーありがとやんした!?』 『クイズ赤恥青恥』『ダウンタウンのごっつええ感じ』『ドラゴンズ倶楽部』など。

    またプロデューサーとして、秋元康氏が携わった数多くのプロジェクトにも参加。
    映画『着信アリ』アイドルグループ『AKB48』など。

    2008年1月、ゲーム及びWebコンテンツの制作会社である株式会社インディソフトウェアに入社。
    ゲームソフトのプロデュースやWebコンテンツの制作に従事する。

    2009年4月、株式会社吉田正樹事務所に入社。
    『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』出版を機に、
    現在は所属作家として活動中。


インタビュー/荒木重雄(編集長)
写真/福田清志

teams

teams

megaking2016

select9

グラブレザーコレクション

ミズノボールパーク in 草オン

teams