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  4. #001 坪田信義名人 『野球とは「無我になれる」こと』

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  • 「職人じゃなくて技術者であれ」
  • 編集長

    普通の世界であれば、名人というのはものづくりに対して「こうあるべき」というこだわりがあると思うのですが、名人は「職人じゃなく技術者であれ」と。逆に「自分の思いを入れちゃだめなんだ、その選手の思いを形にするんだ」とおっしゃっています。

    名人

    そりゃね、やっぱり、ここ、こうした方が私はええと思う時ありますよ。
    しかし、それを私が言っちゃダメですよね。

    編集長

    そういう意味では、選手の意見を的確に聞き出さないといけない。

    名人

    そうですね、それが一番難しいです。
    だからまず選手と話をする時は、手ぶらでは聞かないですね。
    選手のロッカーに行ったりとか、練習の合間に聞くんやったら、グラブを持ってる時に聞くんです。そのグラブを見ながらね。ただ、手ぶらで何やかんや言われたって、やっぱりちょっと理解しがたいですから。
    ですから一応ゲームで使っているグラブを基にして、いろいろ聞くんですね。
    私はプレイヤーとは違いますが、15年は、ずっと草野球をやっていたんですよ。会社のチームに入ってね。
    でも自分は野球をやりながら、重たい方がええか軽い方がええとか、分からなかったんですよ。
    ですから最初、選手と接触しだした頃は、ちょっと戸惑いを。いろんな分からない事がいっぱいありました。理解できないことがね。

  • 「そんなグラブ作ってしまってすんません」
  • 編集長

    名人から見て、60年間グローブを作って「理想的なグローブはこういうグローブだっていうもの」は、逆に無いということですね?

    名人

    無いです。
    私らの取引先、小売店なんか行くと、店員やお客さんから「いいグラブの条件」や「いいグラブと言ったらどういうグラブですか?」って聞かれるんです。
    答えようがないんですよ。十人十色、皆違うんです。手の大きさも違えば、握力も違う。
    それを「こういうグラブがいいんです」と言ったって、皆に当てはまらない訳ですよ。

    編集長

    思いを込めて、選手の意見通りに作って、選手がファインプレーした、エラーした、それに対する思いはあるんですか。

    名人

    いやぁ、やっぱり良いプレーをすると嬉しいですよ。球場に行って顔を合わせた時に「こないだ、いついつの試合、ええプレーしましたね!」て言うてね。
    2007年ですかね。仙台でのオールスターに行った時に、セ・リーグのロッカーで井端選手(中日)に会ったんですよ。
    そしたら「せっかく作ってもらったグローブで、こないだエラーしてしまいました。すみません!」て言うてね、せやから「とんでもないです、そんなグローブ作ってしまい、すんません」って謝ったんですよ。お互いが謝り合い(笑)。
    少なからず野球をやっていた人間からすると、なんとなくわかるのは、作り手側も特別なものだし、使う側も特別なものだから、そうやって言われるのはものすごい嬉しいんですよね。
    今度作る時は、もっといいやつを作ろうと。
    いつも、ちゃらんぽらんでやってる訳じゃないですけど、もっと精神統一してっていう気が沸きあがるんです。

  • 名人が敷いた3つのレール

  • 1978年 初めてのドジャース訪問
    ワークショップカーの前にて

    編集長

    今でこそメジャーリーガーになっている日本人選手もたくさんいますけど、名人はそれよりも前に向こう(メジャー)に行かれ、メジャーリーガーと一緒に仕事をしていた訳ですもんね。

    名人

    僕がと言ったら、私1人じゃないですけど、レールを敷いたなという誇りを持っているんです。
    日本のプロ球界でも国内で最初にグラブを作り出したのは私。これも私がレール敷いたなと。
    そして、国内のワークショップ。私が乗り出した時、材料はアメリカ式と一緒で、材料・革・型紙みんな入れて、その国内のワークショップでも作れる態勢でまわりましたからね。これも私がレール敷いたなと。
    ですから3つ、自分でレールを敷いたなと思っているんです。
    アメリカと日本とワークショップですね。これが、私にとって一番の勲章やと自分では思っています。
    もちろん、私1人の力でできたことじゃないですけどね。やっぱりサポートしてくれる人がいたからです。

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